「屋根の塗装を考えているんだけど、見積もりに『縁切り』とか『タスペーサー』って書いてある…これって何?」
屋根塗装をご検討中の方なら、こんな疑問を持ったことがあるかもしれませんね。聞き慣れない言葉ですが、実はこの「縁切り」と「タスペーサー」、お家の屋根を長持ちさせるために、とっても大切な役割を果たしているんです!
この記事では、屋根塗装の専門知識がない方にも「縁切り」と「タスペーサー」がなぜ必要なのか、どんなものなのかを、わかりやすく解説していきます。見積もり内容の理解も深まり、安心して塗装工事を依頼できるようになりますよ。
まずは基本!「縁切り(えんきり)」って何?なぜ必要なの?
「縁切り」とは、簡単に言うと、屋根材と屋根材が重なっている部分に、わざと「隙間」を作ってあげる作業のことです。
特に、日本の多くの住宅で使われている「スレート屋根」(カラーベストやコロニアルといった商品名で呼ばれることもあります)の塗装(塗り替え)において、この縁切り作業が重要になります。
「えっ?隙間を作ったら、そこから雨が入っちゃうんじゃないの?」
そう思いますよね!でも実は逆なんです。適切な隙間がない方が、かえって雨漏りのリスクを高めてしまうことがあるのです。
その理由は主に2つあります。
理由1:雨漏りを防ぐ!水の「出口」を作るため
スレート屋根は、その構造上、強い雨や風が吹いたときなどに、屋根材の下に雨水が入り込むことがあります。これは、ある程度仕方のないこと。大切なのは、入り込んだ雨水をスムーズに外へ排出できる「出口」があるかどうかです。
スレート屋根材の表面や重なり部分には、もともと雨水を排出するための溝や隙間があります。しかし、屋根塗装を行うと、ペンキ(塗料)がその大事な隙間をピッタリと塞いでしまうことがあるんです。
▲塗料で塞がると、水の逃げ場がなくなってしまいます!
水の出口がなくなると、屋根材の下に入り込んだ雨水は行き場を失い、溜まってしまいます。その結果、屋根の下地材(木材など)を腐らせてしまい、最終的に雨漏りを引き起こす原因になってしまうのです。
▲縁切りをしないと、こんな悲しい事態になることも…
理由2:お家の「呼吸」を助ける!内部結露を防ぐため
冬場、窓ガラスがびっしょり濡れる「結露」。実は、屋根裏でも同じようなことが起こる可能性があります。
家の中の暖かい空気は上へ上へと昇っていき、屋根裏に溜まります。一方、屋根の表面は外気にさらされて冷えています。この屋根の内側と外側の温度差によって、屋根裏で結露が発生することがあるのです。
縁切りによって屋根材の間に隙間がないと、この結露によって発生した水分や、屋根裏にこもった湿気の逃げ道もなくなってしまいます。湿気がこもり続けると、断熱材が湿って性能が落ちたり、柱などの木材が腐ったりする原因になります。
つまり、縁切りは屋根材の下に入った雨水だけでなく、建物内部の湿気を外に逃がし、お家全体の通気性を保つためにも重要な役割を果たしているのです。
昔ながらの「縁切り」方法とその問題点
こんなに大切な縁切り作業ですが、以前はとても地道な方法で行われていました。
それは、塗装が完了した後に、職人さんが屋根にのぼり、カッターナイフや「皮スキ」と呼ばれるヘラのような道具を使って、塗料でくっついてしまった屋根材の重なり部分を一枚一枚、手作業で切り離していくという方法です。
▲一枚一枚、地道に切っていく作業でした。
この従来の方法には、いくつかの問題点がありました。
- とにかく手間と時間がかかる: 何百枚もある屋根材すべてに行うため、非常に時間がかかりました(作業員2人で丸1日かかることも)。
- コストがかかる: 作業時間が長いということは、それだけ人件費がかかるため、工事費用にも影響します。
- 仕上がりに影響するリスク: せっかくキレイに塗装した屋根の上を歩き回るため、足跡で汚してしまったり、カッターで塗膜を傷つけてしまったりする可能性がありました。
- 効果が不十分なことも: 切った隙間が狭すぎると、時間が経つうちにまた塗料でくっついてしまうこともありました。
- 手抜きのリスク?: 大変な作業で、しかも足場を解体してしまうと確認しにくいため、残念ながら省略してしまう業者も存在したと言われています。
そこで登場!縁切りの救世主「タスペーサー」とは?
こうした従来のカッターによる縁切りの問題点を解決するために開発されたのが「タスペーサー」です。
タスペーサーは、屋根材部品メーカーであるセイム社が開発・販売している、縁切り専用の部材(部品)のこと。ポリカーボネート製の小さな板のような形状をしています。
▲これがタスペーサーです。
これを屋根材と屋根材の重なり部分に差し込むことで、塗装しても塞がらない、適切な大きさの隙間を「あらかじめ」確保しておくことができるのです。
▲下塗りの後に、このように差し込んでいきます。
タスペーサーを使えば、塗装後にカッターで一枚一枚縁切りする必要がなくなるため、「タスペーサー工法」と呼ばれ、現在多くの塗装業者で採用されています。
タスペーサーはどうやって使うの?いつ使う?
タスペーサーは、屋根塗装の工程の中で、「下塗り」が終わったタイミングで挿入するのが一般的です。(※タスペーサーには種類があり、「タスペーサー01」は塗装前、「タスペーサー02」は下塗り後の挿入が推奨されています。詳しくは業者にご確認ください。)
使い方はシンプルで、屋根材の重なり部分(水の流れる方向に対して左右)に、適切な数を差し込んでいくだけです。
一般的には、1枚の屋根材に対して2つのタスペーサーを挿入する「ダブル工法」が推奨されています。これにより、より確実に隙間を確保し、雨水の排出効果を高めることができます。タスペーサーの種類やさらに詳しい施工方法については、製造元であるセイム社の公式サイトも参考にしてみてください。
挿入したタスペーサーは、取り出す必要はありません。そのまま上から中塗り・上塗りの塗装を行います。塗料となじむ素材でできているため、塗装後はほとんど目立たなくなります。そして、タスペーサーが挿入されていることが、「きちんと縁切りが行われた証拠」にもなるので安心です。
メリットいっぱい?タスペーサーのメリット・デメリット比較
タスペーサーを使うことには、たくさんのメリットがありますが、いくつか注意点もあります。従来の縁切り方法と比較してみましょう。
比較項目 | タスペーサーを使う場合 | 従来の縁切り(カッター等) |
作業効率 | ◎ 短時間で完了 (約2~3時間/一般的な家) | △ 時間がかかる (2人で1日程度) |
仕上がり | ◎ キレイ (塗装面を傷つけない・汚さない) | △ 傷・汚れのリスクあり |
確実性 | ◎ 確実な隙間確保 (後から塞がらない) | △ 塞がる可能性・手抜き懸念あり |
確認のしやすさ | ◎ 一目瞭然 (挿入されているかで判断) | × 確認しにくい |
コスト | △ 部材費がかかる場合あり | ◯ 部材費は不要 (ただし人件費増) |
屋根材への影響 | △ 劣化が激しいと割れるリスクあり | △ 塗膜を傷つけるリスクあり |
作業工程 | ◎ 塗装後の作業不要 | × 塗装後の作業が必要 |
タスペーサーの主なメリット
- 作業時間の大幅短縮 → 人件費削減につながる可能性
- 塗装後のキレイな仕上がりを損なわない
- 確実に隙間を確保でき、雨漏り・結露防止効果が高い
- 縁切り作業が行われたかどうかが、後からでも確認しやすい
タスペーサーの主なデメリット・注意点
- 部材そのものの費用がかかる
- 屋根材の劣化が進んでいる場合、挿入時に屋根材が割れてしまうリスクがある(ただし、通常の使用で人が乗っても割れない程度の強度はあります)
ちょっと待って!タスペーサーって、どんな屋根にも絶対必要なの?
ここまでタスペーサーのメリットをたくさんお伝えしてきましたが、実は「縁切り」や「タスペーサー」が不要なケースも存在します。
- 屋根材の間に十分な隙間がすでにある場合
長年の紫外線や風雨の影響で、屋根材が自然に反り返り、目安として4mm以上の隙間が空いている場合は、わざわざタスペーサーを入れる必要はありません。無理に入れようとしても、固定されずに落ちてしまうこともあります。
同じ家でも、日当たりの良い南面は隙間が空いているけれど、北面は詰まっている、というように場所によって必要・不要が分かれることもあります。 - 屋根材の劣化が著しい場合
塗装メンテナンスを長期間行っていなかったり、屋根材自体がもろくなっていたりする場合、タスペーサーを挿入する際のわずかな力で屋根材が割れてしまう危険性があります。このような場合は、塗装自体が可能かどうかも含めて、業者とよく相談する必要があります。 - そもそも縁切りが不要な構造の屋根材の場合
瓦屋根や金属屋根など、スレート屋根とは構造が異なる屋根材の場合は、基本的に縁切り作業は不要です。
タスペーサーを使う場合の費用はどれくらい?
タスペーサーを使った縁切り作業の費用は、業者によって異なりますが、一般的な30坪程度の住宅で、おおよそ3万円~5万円(1平方メートルあたり450円程度)が相場と言われています。
一方、従来のカッターによる縁切り作業は、3万円程度が相場ですが、作業時間が長いため人件費が高くなる可能性があります。
タスペーサーの部材費はかかりますが、人件費が削減できるため、トータルの費用で見ると、従来の方法とあまり変わらないか、むしろ安くなるケースも考えられます。見積もりを取る際には、費用の内訳をしっかり確認しましょう。
【ここが重要!】見積書にタスペーサーがなくても大丈夫?信頼できる業者の見分け方
インターネットで屋根塗装について調べて、「縁切りやタスペーサーは必須!」という情報を目にすることもあるかと思います。そのため、いざ見積もりを取ってみて、タスペーサーの項目がないと、「この業者、手抜きするつもりなのかな?」と不安になってしまうかもしれません。
でも、ちょっと待ってください!
これまで説明してきたように、タスペーサーは全ての屋根塗装で絶対に必要なわけではありません。屋根の状態によっては、不要な場合もあるのです。
大切なのは、見積書にタスペーサーの項目があるかないか、ということよりも、「なぜ、あなたの家の屋根にタスペーサーが必要なのか(あるいは不要なのか)」を、きちんと調査した上で、納得できるように説明してくれる業者かどうか、ということです。
- 「この屋根は隙間が十分空いているので、タスペーサーは不要です」
- 「屋根材の重なりが詰まっているので、雨漏り防止のためにタスペーサーが必要です」
このように、理由を明確に説明してくれる業者を選びましょう。見積もりの項目一つ一つについて、疑問があれば遠慮なく質問し、丁寧に答えてくれる業者なら、安心して任せられる可能性が高いでしょう。
まとめ:縁切りとタスペーサーを知って、安心の屋根塗装を!
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- 縁切りは、スレート屋根塗装において、雨漏りや内部結露を防ぐために非常に重要な作業です。
- タスペーサーは、従来の縁切り作業の問題点を解決し、効率的かつ確実に、キレイに縁切りを行うための便利な部材です。(製造元:セイム社)
- タスペーサーには、作業時間短縮、仕上がりの美しさ、確実性などのメリットがあります。
- 一方で、部材費がかかる、劣化状況によっては使えないといった注意点もあります。
- 全ての屋根にタスペーサーが必須というわけではなく、不要なケースも存在します。
- 見積書にタスペーサーの有無だけで業者を判断せず、なぜ必要か(不要か)をきちんと説明してくれる、信頼できる業者を選びましょう。
「縁切り」と「タスペーサー」についてご理解いただけたでしょうか? 屋根塗装は決して安い買い物ではありません。大切な我が家を守るためにも、工事内容をしっかり理解し、納得のいく塗装工事を実現してくださいね。
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「兵庫県姫路市で屋根修理をお願いしましたが、親切な対応と確かな技術で大満足です!」(50代・女性)
「雨漏りが気になっていましたが、しっかりと原因を特定し、丁寧に施工していただきました」(40代・女性)
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