「うちの外壁、ALCパネルって言われたけど、塗装は必要なの?」
「ALCパネルの塗装費用って、サイディングと比べて高いの?」
「塗装する時の注意点や、おすすめの塗料って何?」
軽量でありながら、断熱性・耐火性・遮音性に優れる高性能な外壁材「ALCパネル」。
その優れた性能を長く維持するためには、定期的な塗装メンテナンスが不可欠です。
しかし、ALCパネルには「水を吸いやすい」という最大の弱点があり、塗装方法を間違えると、数年で塗膜が膨れたり剥がれたりする深刻なトラブルに繋がってしまいます。
この記事では、ALCパネルの外壁塗装に特化して、
- なぜALCパネルに塗装が必要なのか?その理由とタイミング
- 坪数別のリアルな費用相場と、見積もりの内訳
- 【最重要】ALC塗装で絶対に失敗しないための3つの鉄則
- プロがおすすめする、ALCパネルに最適な塗料とは?
などを、塗装初心者の方にも分かりやすく、とことん丁寧に解説します。この記事を読めば、ALCパネルの特性を完全に理解し、後悔しない最適な塗装プランを選べるようになります。
1. そもそもALCパネルとは?なぜ塗装が必要なのか
ALCパネルとは、「Autoclaved Lightweight aerated Concrete(高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)」の略。その名の通り、内部に無数の気泡を持つ、軽石のようなコンクリートパネルです。
| ALCパネルのメリット | ALCパネルのデメリット(弱点) |
|---|---|
| ◎ 断熱性が高い(コンクリートの約10倍) | × 水を非常に吸いやすい(防水性が低い) |
| ◎ 耐火性に優れる(燃えない) | × パネルの継ぎ目(目地)が多い |
| ◎ 遮音性が高い(音が伝わりにくい) | |
| ◎ 軽量で耐震性が高い | |
| ◎ 耐久性が高い(適切なメンテで50年以上) |
この表の通り、ALCパネルは多くの優れた性能を持っていますが、「水を吸いやすい」という致命的な弱点を抱えています。
そのため、表面を「塗装(塗膜)」でコーティングし、防水性を確保することが絶対に不可欠なのです。この塗膜が劣化すると、ALCパネルがスポンジのように水を吸い込み、冬場の凍害によるひび割れや、内部の鉄筋のサビを引き起こし、せっかくの長寿命を台無しにしてしまいます。
塗装のタイミングはいつ?【3つの劣化サイン】
以下のサインが見られたら、塗装を検討する時期です。一般的に10年~15年周期でのメンテナンスが推奨されます。
- チョーキング現象: 壁を手で触ると、チョークのような白い粉が付く。塗膜の防水性が失われ始めた初期サイン。
- ひび割れ(クラック): パネル自体や目地部分にひび割れが発生。雨水の浸入口になる。
- 目地コーキングの劣化: パネルの継ぎ目を埋めているゴム状の「コーキング」に、ひび割れや肉痩せが見られる。
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2.【費用はいくら?】ALCパネル外壁塗装のリアルな価格相場
ALCパネルの塗装費用は、サイディングやモルタルと比べて「コーキング(シーリング)工事」の費用が多くかかるため、やや割高になる傾向があります。
坪数別の費用相場(足場代・コーキング工事費込み)
| 坪数 | 外壁面積の目安 | 塗装費用の総額目安 |
|---|---|---|
| 20坪 | 90㎡~110㎡ | 70万円 ~ 120万円 |
| 30坪 | 130㎡~150㎡ | 95万円 ~ 150万円 |
| 40坪 | 170㎡~190㎡ | 110万円 ~ 180万円 |
| 50坪 | 210㎡~230㎡ | 135万円 ~ 200万円 |
30坪の見積もり内訳例(シリコン塗装の場合)
なぜこの金額になるのか、30坪の住宅を例にした見積もり内訳を見てみましょう。
| 項目 | 数量 | 単価(円) | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 仮設足場(ネット含む) | 197㎡ | 800 | 157,600 |
| 高圧洗浄 | 148㎡ | 200 | 29,600 |
| コーキング打ち替え(目地) | 360m | 800 | 288,000 |
| 下地補修(ひび割れ等) | 一式 | – | 30,000 |
| 下塗り(フィラー) | 148㎡ | 800 | 118,400 |
| 中塗り・上塗り(シリコン) | 148㎡ | 2,500 | 370,000 |
| 付帯部塗装(雨樋など) | 一式 | – | 150,000 |
| 諸経費 | 式 | – | 100,000 |
| 小計 | 1,243,600 | ||
| 消費税(10%) | 124,360 | ||
| 合計金額 | 約137万円 |
ポイント
一般的なサイディング外壁に比べて、ALCパネルは目地の数が多いため、「コーキング打ち替え」の費用が2倍近くかかります。これが、総額が高くなる大きな理由です。
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3.【最重要】ALCパネルの外壁塗装で失敗しないための3つの鉄則
ALCパネルの性能を最大限に活かし、長持ちさせる塗装を行うには、絶対に守るべき3つの鉄則があります。
鉄則①:塗料は「透湿性の高い」ものを選ぶ
ALCパネル最大の弱点は「吸水性」ですが、同時に「湿気を放出する(乾燥しやすい)」という長所も持っています。
もし、ゴムのような弾性塗料など、湿気を通しにくい(透湿性が低い)塗料で表面を完全に塞いでしまうと、内部に溜まった湿気の逃げ場がなくなり、塗膜が内側から押し上げられて風船のように膨れる「塗膜の膨れ」という重大な不具合を引き起こします。
ALCパネルの塗装では、壁内部の湿気を外に逃がす機能を持つ「透湿性の高い塗料」を選ぶことが絶対条件です。
鉄則②:目地のコーキング工事をケチらない
ALCパネルの建物で最も雨漏りの原因となりやすいのが、パネルの継ぎ目である「目地」です。この目地を埋めているコーキングが劣化すると、そこから大量の雨水が浸入し、ALCパネルを内部から破壊してしまいます。
塗装工事の際には、必ず既存の古いコーキングをすべて撤去し、新しく充填し直す「打ち替え」工事を行いましょう。塗料よりもコーキングの方が寿命が短いため、ここをケチると数年後に再び足場を組んでコーキングだけやり直す、という無駄な出費が発生します。
鉄則③:下塗り材「フィラー」でしっかりと下地を作る
ALCパネルの表面には、その製造過程でできた無数の小さな気泡(穴)があります。この穴をしっかりと埋め、平滑な下地を作らないと、上塗り塗料をきれいに仕上げることができず、塗膜の密着不良の原因にもなります。
下塗りには、目止め効果の高い「フィラー」(微弾性フィラーなど)を使用し、たっぷりと厚みをつけて塗装することが、美しい仕上がりと長寿命に繋がります。
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4. ALCパネルにおすすめの塗料は?
上記の3つの鉄則を踏まえた上で、ALCパネルにおすすめの塗料グレードを紹介します。
- 【定番・おすすめ】シリコン塗料 / ラジカル制御型塗料
- 特徴: 現在の戸建て塗装で最も主流のグレード。10年~15年の十分な耐用年数を持ち、コストと性能のバランスに優れています。もちろん、透湿性の高い製品を選びます。
- 代表製品: 日本ペイント「パーフェクトトップ」、エスケー化研「プレミアムシリコン」など。
- 【長期耐久性重視なら】フッ素塗料 / 無機塗料
- 特徴: 15年以上の長い耐用年数を誇るハイグレード塗料。塗り替えの回数を減らし、長期的なメンテナンスコストを抑えたい場合に最適です。
- 注意点: 塗膜が硬いため、ひび割れへの追従性が低い製品もあります。下塗りの微弾性フィラーで柔軟性を補うなどの工夫が必要です。
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5. まとめ
高性能なALCパネルは、その特性を正しく理解し、適切な塗装メンテナンスを行うことで、50年以上にわたって快適で安全な住まいを守ってくれる素晴らしい外壁材です。
- ALCパネルは「水を吸いやすい」弱点があり、防水のための塗装が不可欠。
- 塗装費用は30坪で95万円~150万円が相場。目地が多いためコーキング費用が高くなる。
- 成功の鉄則は「①透湿性の高い塗料」「②コーキング打ち替え」「③フィラーでの下塗り」。
- おすすめの塗料は、コストと性能のバランスが良い「シリコン」または「ラジカル制御型」。
- ALCの特性を熟知した、実績豊富な専門業者に依頼することが最も重要。
もし業者から「安く済むから弾性塗料で塗りましょう」「コーキングはまだ大丈夫だから増し打ちで」といった提案があった場合は、要注意です。
この記事の知識を参考に、ALCパネルの特性を正しく理解した上で、信頼できる業者に最適な塗装プランを提案してもらいましょう。
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