HOME » 屋根修理を依頼する前に » 屋根の形状 » 瓦棒葺き屋根とは?初心者でもわかる瓦棒葺き屋根|「瓦」じゃない?構造と弱点を徹底解剖
トタン屋根

「瓦棒葺き(かわらぼうぶき)という屋根があるらしいけど、一体どんな屋根?」
「名前に『瓦』とつくから、瓦屋根の一種なの?」

屋根のリフォームを調べていると、時々耳にする「瓦棒葺き」という言葉。しかし、その正体を正確に知っている方は少ないかもしれません。

実はこれ、瓦を一切使わない金属屋根の一種で、昔ながらの「トタン屋根」の多くがこの工法で施工されています。

この記事では、そんな「瓦棒葺き屋根」の正体に迫ります。

  • そもそも瓦棒葺きとは何か、その構造
  • メリットと、知っておくべき致命的な弱点
  • 現代の主流工法「立平葺き」との違い

などを、図解を交えながら初心者の方にも分かりやすく解説。ご自宅の屋根が瓦棒葺きだった場合の最適なメンテナンス方法までご紹介します。

「瓦棒葺き屋根」とは?その正体と構造

トタン屋根葺き替え

瓦棒葺き屋根とは、屋根のてっぺんから軒先に向かって縦方向に金属板を葺いていく「縦葺き」という施工方法の一つです。その最大の特徴は、屋根材を固定するために「瓦棒(心木)」と呼ばれる木材を使用する点にあります。

なぜ「瓦」という名前?

瓦を一切使わないのに「瓦棒」と呼ばれるのは、その見た目に由来すると言われています。屋根の傾斜に沿って等間隔に並んだ凸部が、まるで瓦を並べたように見えることから、この名がついたとされています。

瓦棒葺きの構造を分解してみよう

瓦棒葺き屋根は、主に以下の3つのパーツで構成されています。

  1. 瓦棒(心木):屋根の下地の上に、30〜45cm間隔で取り付けられる木製の角材。屋根材を固定するための土台となります。
  2. 金属屋根材(どぶ板):瓦棒と瓦棒の間にはめ込むように設置される、溝型に加工された金属板。かつてはトタン(亜鉛めっき鋼板)が主流でしたが、現在ではより錆びに強いガルバリウム鋼板が使われます。
  3. キャップ(カッパ):瓦棒(心木)の上から被せるフタのような金属板。これを上から釘で打ち付けて、屋根全体を固定します。

この「木製の瓦棒(心木)」の存在が、瓦棒葺き屋根の性能と寿命を理解する上で最も重要なポイントになります。

より詳しく知りたい方は
下記よりお問い合わせください。

フリーダイヤル 0120-905-454 (平日・土曜 9:00~18:00)

瓦棒葺き屋根のメリットと、知っておくべき弱点

かつて広く普及した瓦棒葺きですが、現代の視点で見るとメリットよりもデメリットの方が大きいのが実情です。

メリット

  • 排水性が高い
    縦葺きのため、雨水が上から下へスムーズに流れます。そのため、屋根の傾斜が緩やかな「緩勾配」の屋根にも施工が可能です。
  • 施工が比較的簡単で安価
    構造がシンプルなため施工しやすく、屋根材も大きく加工の手間が少ないため、工期が短く、工事費用を抑えやすいというメリットがありました。

デメリット(弱点)

  • 【最大の弱点】内部の木材(瓦棒)が腐食しやすい
    これが瓦棒葺き屋根の致命的な弱点です。キャップを留めている釘穴や、金属の接合部からわずかに雨水が侵入すると、内部にある木製の瓦棒が水を吸って腐ってしまいます。この腐食が進行すると、屋根材を固定する力が弱まり、強風で屋根全体がめくれ上がったり、腐った木材から雨漏りを引き起こしたりします。
  • 遮音性・断熱性が低い
    薄い金属板一枚で構成されているため、瓦屋根などに比べて雨音が響きやすく、夏の熱も室内に伝わりやすいという金属屋根特有のデメリットがあります。
  • デザインが限られる
    縦のラインが強調されたシンプルな見た目になるため、デザインのバリエーションは少なく、好みが分かれます。

瓦棒葺きの弱点を克服!現代の主流「立平葺き(縦ハゼ葺き)」との違い

瓦棒葺きの最大の弱点である「心木の腐食」を解決するために開発されたのが、現代の縦葺き屋根の主流である「立平葺き(たてひらぶき)」です。

立平葺きは、瓦棒(心木)を一切使いません。金属板の端を折り曲げ加工し、その部分を重ね合わせて固定します。木材を使わないため、内部で腐食が起こる心配が根本的にありません。

【瓦棒葺き vs 立平葺き 比較表】

比較項目瓦棒葺き(旧工法)立平葺き(現主流)
心木(木材)ありなし
腐食リスク高い(心木が腐る)低い(腐る木材がない)
耐久性低い高い
施工性シンプルより簡単でスピーディー
デザイン凸部が太い凸部が細く、よりスタイリッシュ

このような理由から、現在、新築やリフォームで縦葺き屋根を施工する場合、ほぼ100%「立平葺き」が採用されます。

自宅の屋根が「瓦棒葺き」だったら?最適なメンテナンス方法は?

ポイント

もしご自宅の屋根が瓦棒葺きで、サビや塗膜の剥がれなどの劣化が見られる場合、どのようなメンテナンスが必要なのでしょうか。

結論から言うと、内部の腐食リスクを根本から解決できる「葺き替え工事」が最もおすすめです。

  • 塗装(費用相場:15~25万円)
    表面のサビを防ぐことはできますが、内部の心木の腐食を止めることはできません。あくまで延命措置です。
  • カバー工法(費用相場:90~110万円)
    既存の屋根の上に新しい屋根を被せる工法。費用を抑えられますが、心木の腐食が激しい場合は施工できません。
  • 葺き替え(費用相場:100~120万円)
    既存の瓦棒屋根を心木ごとすべて撤去し、腐食リスクのない「立平葺き」に交換する工事です。費用は最もかかりますが、屋根の寿命をリセットし、長期的な安心を手に入れることができます。

瓦棒屋根のリフォームは、金属屋根を専門とする「建築板金業者」に相談しましょう。

まとめ

この記事では、瓦棒葺き屋根の正体について解説しました。

  • 瓦棒葺きとは:瓦ではなく、木製の心木を使って固定する旧式の金属屋根(トタン屋根など)
  • 最大の弱点:内部の心木が腐食し、雨漏りや屋根の飛散に繋がりやすいこと。
  • 現代の主流は:心木を使わない「立平葺き」
  • 最適なリフォーム:腐食リスクを根本から断ち切る「立平葺き」への葺き替え工事が最もおすすめ。

もしご自宅の屋根が瓦棒葺きで、築20年以上経過している場合は、目に見えるトラブルがなくても、内部で腐食が進行している可能性があります。手遅れになる前に、一度専門家による点検を受けてみることを強くお勧めします。

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