HOME » 屋根材の種類と特徴 » 【モニエル瓦の完全ガイド】特徴・見分け方から最適なメンテナンス、費用まで専門家が徹底解説
モニエル瓦

「お宅の屋根は『モニエル瓦』ですから、そろそろ塗装が必要ですよ」
ある日、訪問販売の業者に突然そう言われて、
「モニエル瓦って、初めて聞いたけど何のこと?」
「うちは瓦屋根のはずなのに、塗装が必要なの?」
「そもそも、うちの屋根って本当にモニエル瓦なんだろうか…」
と、次から次へと湧き上がる疑問や不安に戸惑ってはいませんか?

かつて、そのヨーロピアンなデザイン性の高さから、日本中の洋風住宅で一世を風靡した「モニエル瓦」。しかし、その美しい見た目の裏には、現在では生産が終了しているという事実と、メンテナンスに専門的な知識が必要という、知っておくべき重要な特性が隠されています。

この記事では、そんな少しミステリアスな「モニエル瓦」の正体に、あらゆる角度から徹底的に迫ります。

  • モニエル瓦とは何か?その特徴と辿ってきた歴史
  • 誰でもできる!ご自宅の屋根がモニエル瓦か見分けるためのセルフチェック法
  • 放置は絶対NG!見逃してはいけない7つの劣化サインとその危険度
  • 塗装か?葺き替えか?築年数で変わる最適なメンテナンス方法と費用
  • モニエル瓦の工事で失敗しないための、業者選びの鉄則

など、モニエル瓦に関するすべての情報を網羅しました。ご自宅の屋根への正しい理解を深め、将来にわたって後悔しないメンテナンスを行うための完全ガイドとして、ぜひ最後までじっくりとお読みください。

モニエル瓦とは?【その正体と歴史的背景】

モニエル瓦とは、セメントと砂を主成分として作られた「乾式コンクリート瓦」と呼ばれる屋根材の一種です。
もともとはヨーロッパで広く普及していた屋根材で、日本では1973年から、当時外資系企業だった「日本モニエル社(後のラファージュルーフィング社)」が製造・販売を開始しました。

その洋風でおしゃれなデザインと、従来の日本の瓦にはなかった豊かなカラーバリエーションが、高度経済成長期の住宅デザインの洋風化の流れとマッチし、1970年代から1980年代にかけて、全国の洋風住宅で爆発的な人気を博しました。

しかし、その後の屋根材の多様化や、後述するメンテナンスの必要性などから、残念ながら2010年に日本モニエル社が屋根材事業から撤退。モニエル瓦は国内での生産を完全に終了しています。

粘土瓦との決定的な違いは「塗装の有無」

日本の伝統的な「和瓦」や、一般的な「洋瓦」の多くは、粘土を高温で焼き固めて作る「粘土瓦(陶器瓦)」です。こちらは陶器のお茶碗やお皿と同じ「焼き物」なので、素材そのものに色が練り込まれており、紫外線で色あせることがほとんどありません。そのため、塗装によるメンテナンスは一切不要です。

一方、モニエル瓦の主成分はセメントです。素材自体に色はなく、成形した瓦の表面を専用の塗料で着色・コーティングすることで、初めて防水性と美観を保っています。そのため、経年でこの塗装が劣化すると、色あせはもちろん、様々な問題を引き起こします。「定期的な塗装メンテナンスが不可欠」という点が、粘土瓦との最大の違いであり、モニエル瓦を扱う上で最も重要なポイントです。

【簡単セルフチェック】我が家の屋根はモニエル瓦?セメント瓦との見分け方

「うちの屋根、セメントでできてるみたいだけど、モニエル瓦なのかな?」
モニエル瓦は、他の一般的な「セメント瓦」と見た目が非常によく似ているため、専門家でないと見分けるのが難しい場合があります。しかし、誰でも比較的簡単にチェックできる2つのポイントがあります。

ポイント1:瓦の断面(小口)を観察する

もし、庭やベランダなどに割れた瓦の破片が落ちていたら、絶好のチャンスです。その断面(小口)をじっくりと観察してみてください。

  • 断面がツルっとしていて比較的平ら → 一般的なセメント瓦の可能性が高い
  • 断面がザラザラしていて、砂利のような小さな粒が混ざっている → モニエル瓦(コンクリート瓦)の可能性が高い

モニエル瓦は厳密には「コンクリート瓦」なので、強度を出すために砂利が混ぜ込まれているのが特徴です。この質感の違いが、見分けるための一つの手がかりになります。

ポイント2:瓦の裏面に刻まれた「M」のロゴを探す

これは最も確実な方法ですが、ご自身で屋根に登るのは非常に危険なため、専門業者に点検を依頼した際に確認してもらうのが良いでしょう。モニエル瓦の裏面には、その出自を示すメーカーの「M」のロゴが刻印されています。これがあれば、100%モニエル瓦であると断定できます。

【見逃し厳禁!】モニエル瓦の劣化サインとメンテナンス時期

モニエル瓦

モニエル瓦の耐用年数は、適切なメンテナンスを行えば30年~40年とされています。しかし、その表面を保護している塗装はそれより早く劣化し、様々なSOSサインを発します。これらのサインは、屋根がメンテナンスを必要としている重要な合図です。

劣化症状危険度どんな状態?
① 色あせ・変色★☆☆紫外線や雨風の影響で表面の塗膜が劣化し、新築時の鮮やかな色が白っぽくくすんで見えます。美観の問題だけでなく、防水性が低下し始めている初期サインです。
② カビや苔の発生★★☆塗装の防水性が切れ、瓦自体が水分を吸収し常にジメジメした状態になることで、カビや苔が根を張ってしまいます。屋根の保水性が高まっている危険な証拠です。
③ 塗膜の剥がれ★★☆劣化が進み、塗装がパリパリと剥がれてきている状態。下のセメント素地が露出し始めています。
④ ひび割れ(クラック)★★★瓦が水分を吸ったり乾いたりを繰り返すことで、素材自体が伸縮し、もろくなってひびが入ります。放置すると大きな割れや欠けにつながります。
⑤ 瓦の欠け・落下★★★★★劣化の末期症状。ひび割れが進行し、瓦の一部が欠けて落下します。落下した瓦が人や物に当たれば大事故につながるため、極めて危険な状態です。
⑥ 棟(むね)の漆喰の劣化★★★屋根のてっぺんの漆喰が剥がれてくると、棟全体の固定力が弱まり、瓦のズレや崩壊のリスクが高まります。
⑦ 雨漏り★★★★★瓦の割れやズレ、またはその下の防水シートの劣化により、建物内部に水が浸入している状態。早急な対応が必要です。

メンテナンスの推奨時期は、新築または前回の塗装から10年~15年です。

特に、②のカビや苔が広範囲に発生し始めたら、屋根の防水性がかなり低下している証拠。本格的なメンテナンスを検討すべきタイミングと考えてよいでしょう。

モニエル瓦のメンテナンス方法|塗装か?葺き替えか?それが問題だ

モニエル瓦のメンテナンス方法は、大きく分けて「塗装」と「葺き替え」の2つです。どちらが最適かは、「築年数」と「劣化状況」によって明確に判断できます。

メンテナンス方法1:塗装【築15年未満で、瓦のダメージが少ない場合】

色あせや軽微なカビの発生が中心で、瓦自体のひび割れや欠けがほとんどない場合は、塗装によるメンテナンスが可能です。

  • 費用相場: 40万~80万円(足場代込み)
  • 推奨時期: 築10年~15年まで

【モニエル瓦塗装、最大の注意点:スラリー層の攻略】

モニエル瓦の塗装で、他の屋根材と決定的に違うのが「スラリー層」の存在です。

スラリー層とは、モニエル瓦の製造工程の最後に吹き付けられる、セメント系の着色剤の層のこと。これがモニエル瓦独特の風合いを出しているのですが、経年で劣化すると粉っぽくなり、非常に脆い状態になります。この劣化したスラリー層の上から新しい塗料を塗っても、古い塗膜ごと一緒にペリペリと剥がれてきてしまうのです。

そのため、モニエル瓦の塗装では、以下の2つの鉄則を必ず守る必要があります。

  1. 高圧洗浄で、この劣化したスラリー層を徹底的に、執拗なまでに洗い流すこと。
  2. スラリー層への密着性が高い、モニエル瓦専用(またはスラリー洋瓦用)の下塗り塗料を必ず使用すること。

この専門知識がない業者に依頼すると、数年で塗膜が剥がれるといった最悪の施工不良につながります。モニエル瓦の施工実績が豊富で、この「スラリー層」の重要性をしっかり説明できる業者を選ぶことが、塗装を成功させる何よりの秘訣です。

メンテナンス方法2:葺き替え【築15年以上、または劣化が激しい場合はこちらを推奨】

築15年以上経過し、ひび割れや欠けが多数見られる、あるいはこれまで一度もメンテナンスをしてこなかった場合は、塗装ではなく「葺き替え」が強く推奨されます。

  • 費用相場: 120万~250万円(足場代込み、選ぶ屋根材による)
  • 推奨時期: 築15年以上、または劣化が激しい場合

【なぜ塗装ではなく、葺き替えが推奨されるのか?3つの明確な理由】

  1. 瓦が割れても交換できないから
    前述の通り、モニエル瓦は既に生産終了しています。塗装作業中に高圧洗浄の水圧や職人の体重で万が一瓦が割れてしまっても、差し替える新品がありません。その時点で塗装は中止となり、結局は葺き替え工事に切り替えるしかなくなってしまいます。
  2. 塗装できないほど劣化している可能性が高いから
    築15年以上ノーメンテナンスのモニエル瓦は、カビや苔が深く根を張り、素材自体がもろくなっています。このような状態の瓦に塗装をしても、耐久性は回復せず、すぐにまた劣化が進むため、塗装費用が無駄になってしまいます。
  3. 下の防水シート(ルーフィング)が寿命を迎えているから
    屋根の防水の要である、瓦の下の防水シート。その寿命は20年前後です。たとえ高価な塗料で瓦をきれいに塗装しても、数年後に防水シートの劣化で雨漏りが発生し、結局、屋根をすべて剥がす大規模な工事が必要になる可能性が非常に高いのです。

二度手間や無駄な出費を避け、長期的な安心を得るためにも、築15年以上経過したモニエル瓦は、屋根材ごと一新する「葺き替え」が最も確実で、賢明な選択と言えます。

まとめ:モニエル瓦の特性を正しく理解し、最適な時期に最適なメンテナンスを

今回は、モニエル瓦の正体から、その見分け方、適切なメンテナンス方法までを、網羅的に詳しく解説しました。

  • モニエル瓦は、1970~80年代に流行した、現在では生産終了しているセメント系のコンクリート瓦。
  • 「断面がザラザラ」「裏にMのロゴ」で見分けられる。
  • 定期的な塗装が必要だが、その際は「スラリー層の除去」と「専用下塗り材」が必須。
  • 築15年以上経過している場合や劣化が激しい場合は、塗装ではなく「葺き替え」が最も安全で確実な選択肢。

ご自宅の屋根がモニエル瓦だと分かったら、まずはその特性を正しく理解することが大切です。そして、劣化のサインを見逃さず、ご自宅の築年数に合った最適なメンテナンスを、モニエル瓦の施工実績が豊富な専門業者に相談しましょう。それが、ヨーロピアンでおしゃれな外観と、大切な住まいを長く、そして安全に守っていくための最善の方法です。

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