HOME » 屋根材の種類と特徴 » 【熨斗瓦の種類と役割】熨斗瓦(のしがわら)の種類を徹底解説!瓦割りの瓦はこれだった?
熨斗瓦

日本の伝統的な家屋を象徴する、美しく風格のある瓦屋根。そのシルエットを決定づける屋根のてっぺん部分をよく見ると、瓦が何層にも丁寧に積み重ねられているのがわかります。

この重要な部分を構成しているのが、今回ご紹介する「熨斗瓦(のしがわら)」です。

「熨斗」と聞くと、贈り物につける飾りを思い浮かべる方もいるかもしれませんね。直接の関係はありませんが、めでたいことや格式を表すために「重ねる」という行為に、どこか通じるものがあるのかもしれません。

この記事では、そんな奥深い「熨斗瓦」の役割から、知っているとちょっと自慢できる様々な種類、そして現代におけるメンテナンス方法まで、初心者の方にも分かりやすく、そして詳しく解説していきます。

熨斗瓦とは?屋根の守り神にして風格の象徴

熨斗瓦とは、主に和瓦の屋根の頂上部分である「棟(むね)」に使われる、長方形の平たい瓦のことです。

屋根を理解するために、まずは「棟」について少し詳しく見てみましょう。

  • 大棟(おおむね): 屋根の最も高い位置にある、水平な部分。
  • 下り棟(くだりむね)/隅棟(すみむね): 大棟から屋根の四隅に向かって、斜めに下っていく部分。

これらの棟は、屋根の面と面が合わさる部分であり、構造上、雨水が最も浸入しやすい弱点とも言えます。ここに熨斗瓦を何段も積み重ねて「棟積み(むねづみ)」を行い、雨水の浸入をシャットアウトしているのです。

熨斗瓦の2つの重要な役割

熨斗瓦には、単なる部材にとどまらない、大きく2つの役割があります。

1. 雨水の浸入を防ぐ「防水」の役割
熨斗瓦は、下の段の瓦の上に少しずつずらしながら重ねて施工されます。この「ずらし」が非常に重要で、瓦の合わせ目から雨水が浸入しようとしても、下の段の熨斗瓦が受け止め、スムーズに外へ排水する構造になっています。この巧みな水の誘導によって、屋根の内部、そして室内への雨漏りを防いでいるのです。高く積めば積むほど、この防水効果は高まるとされています。まさに、お家を雨から守るための重要な防波堤なのです。

2. 屋根に風格を与える「装飾」の役割
熨斗瓦で棟を高く、そして立派に積み上げることは、その家の格式や権威を象徴する意味合いがありました。特に城郭建築や格式高い寺社仏閣では、競うように棟が高く積まれ、その威厳を示しています。昔の裕福な商家などでは「隣の家より高く積んでほしい」といった依頼があったほど、家の顔となる屋根の美観と風格を決定づける重要な要素でした。

【豆知識】瓦割りの主役は「熨斗瓦」!

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テレビや空手の演武でよく見る、迫力満点の「瓦割り」。あのパフォーマンスで小気味よく割られている瓦は、何を隠そうこの熨斗瓦です。

熨斗瓦は、もともと施工の際に半分に割って使うことがあるため、他の瓦に比べて割りやすい特性を持っています。一般的な屋根の広い面に使われる「桟瓦(さんがわら)」などは非常に硬く、割ろうとしても簡単には割れませんし、強い衝撃で粉々になってしまうため、瓦割りには向いていないのです。

熨斗瓦の種類を徹底解剖!基本から装飾用まで

熨斗瓦と一口に言っても、実は様々な種類が存在します。ここでは代表的なものを、形状やデザイン別に詳しく見ていきましょう。

基本的な熨斗瓦の種類

まずは、一般的に使われることの多い基本的な熨斗瓦です。

種類名特徴
厚のし瓦最も標準的で、広く使われている平たい形状の熨斗瓦です。特別な装飾はなく、シンプルなデザインが特徴です。
小紐のし(小耳のし)瓦熨斗瓦の端(突き合わせ部分)に、紐のような細い線状の装飾が付いています。棟を積んだ時にこのラインがアクセントとなり、よりデザイン性の高い仕上がりになります。
台熨斗(だいのし)棟積みの際、一番下の数段に使われる、半分に割らずに一枚そのままの形で使用する熨斗瓦のことです。土台として棟を安定させる役割があります。

これらの瓦は、同じように見えてもメーカーや製造された年代によって寸法が微妙に異なることがあります。一部だけを交換・補修する際には、既存の瓦と全く同じ寸法のものを選ぶ必要があるので注意が必要です。

屋根を彩る「装飾熨斗瓦」

熨斗瓦は、家の風格を表現するためのキャンバスでもあります。意匠を凝らした様々なデザインの熨斗瓦が存在し、屋根に豊かな表情を与えます。

雨切り(あまぎり)熨斗瓦

上の段の熨斗瓦から下の段へ雨水が直接伝ってしまうのを防ぐ「切り欠き」が入った、非常に機能的な熨斗瓦です。「雨水を切る」という名前の通り、雨漏り対策として有効なだけでなく、見た目にも美しいアクセントとなり、屋根の表情を豊かにします。

松皮菱(まつかわびし)熨斗瓦

松の木の皮のような菱形模様が施された、非常に装飾性の高い熨斗瓦です。お城や格式高い寺社仏閣の屋根でよく見られ、屋根全体に豪華で厳格な雰囲気を与えます。数段重ねて積むことで、その存在感はさらに増します。

熨斗瓦とセットで使われる「冠瓦(かんむりがわら)」

漆喰修理

熨斗瓦を何段も積み重ねた一番てっぺんには、「冠瓦」と呼ばれる半円状や山形の瓦が被せられます。これが棟の最上部となり、雨水の浸入を最終的に防ぐフタの役割を果たします。代表的なものに「紐丸瓦(ひもまるがわら)」や、よりシンプルな「素丸瓦(すまるがわら)」などがあります。

熨斗瓦と冠瓦は、セットで「棟」を構成すると覚えておくと良いでしょう。

こんな症状は要注意!熨斗瓦の劣化サインとメンテナンス

漆喰 修理

伝統的な工法で積まれた熨斗瓦の棟は、経年でメンテナンスが必要になります。以下のようなサインを見つけたら、専門家による点検を検討しましょう。

  • 漆喰(しっくい)のひび割れ・剥がれ
    熨斗瓦の隙間を埋めている白い漆喰が、黒ずんだり、ひび割れたり、剥がれ落ちてきたりしている状態。放置すると、隙間から雨水が浸入し、雨漏りの原因になります。
  • 棟の歪み・蛇行
    屋根を横から見たときに、棟が波打っているように見えたり、歪んでいたりする状態。内部の土が流出したり、下地が劣化したりしている可能性があり、地震や強風で崩れる危険性があります。
  • 瓦のズレ・浮き
    熨斗瓦や冠瓦が明らかにズレていたり、浮き上がっていたりする。非常に危険な状態で、瓦の落下や雨漏りに直結します。

これらの症状は、建物の安全に関わる重要なサインです。早めに屋根の専門業者に相談することをおすすめします。

熨斗瓦の施工方法はどう変わった?【伝統工法 vs 現代工法】

近年、熨斗瓦を取り巻く状況は大きく変化しています。その背景には、棟の施工方法の進化があります。

昔ながらの「湿式工法(しっしきこうほう)」

  • 工法: 葺き土(ふきつち)を台座にし、熨斗瓦を漆喰を使って一段ずつ積み上げていく伝統的な方法。
  • メリット: 重厚感があり、風格のある立派な見た目に仕上がる。
  • デメリット:
    • 重い: 大量の土を使うため非常に重く、建物の重心が高くなるため地震の揺れに弱い。
    • 要メンテナンス: 漆喰が10年ほどで劣化するため、定期的な詰め直し工事が必要。

現代の主流「乾式工法(かんしきこうほう)」

  • 工法: 熨斗瓦を使わず、棟専用の金具と芯材で下地を作り、その上に「棟瓦(冠瓦)」をビスで強力に固定する方法。漆喰の代わりに、防水性と耐久性に優れた「南蛮漆喰」を使用します。
  • メリット:
    • 軽い・強い: 軽量で建物への負担が少なく、金具とビスで固定するため地震や台風に非常に強い(防災ガイドライン工法とも呼ばれます)。
    • メンテナンスフリー: 漆喰の詰め直しのような定期メンテナンスが不要になり、長期的なコストを抑えられる。
  • デメリット: 伝統的な熨斗積みに比べると、見た目がスッキリ(シンプル)になる。

最近では、耐震性や防災性の観点から、リフォームの際に伝統的な熨斗積みの棟から、この乾式工法の棟へ積み替える工事が非常に人気です。

まとめ

今回は、瓦屋根の重要なパーツである「熨斗瓦」について、その役割から種類、現代の工法まで詳しく解説しました。

  • 熨斗瓦は屋根のてっぺん「棟」に使われる平たい瓦
  • 役割は「雨漏り防止」と「家の風格を高めるデザイン性」
  • 瓦割りで使われるのは、この熨斗瓦
  • 「厚のし」のような基本形から「松皮菱熨斗」といった装飾用まで種類は様々
  • 熨斗瓦+冠瓦で棟が構成される
  • 漆喰の剥がれや棟の歪みは劣化のサイン
  • 最近は熨斗瓦を使わない、軽くて丈夫な「乾式工法」が主流

熨斗瓦は、単なる屋根材の一つではありません。日本の家を雨風から守り、その美しさと格式を長年にわたって支えてきた、先人の知恵と美意識が詰まった素晴らしい建材です。

次に瓦屋根を見かけた際には、ぜひ屋根のてっぺんに注目してみてください。そこには、今回ご紹介した熨斗瓦たちが、今も静かにその役割を果たしているはずです。

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