「外壁のひび割れがひどいから、次は弾性塗料で塗り替えたい」
「弾性塗料って、普通の塗装と何が違うの?費用は高くなる?」
「サイディング壁だけど、弾性塗料で塗り替えできる?」
外壁のひび割れ(クラック)対策の切り札として知られる「弾性塗料」。しかし、その特殊な性質ゆえに、塗り替えを検討する際には普通の塗料とは異なる知識と注意点が必要不可欠です。
安易に選んでしまうと、「数年で塗膜が風船のように膨らんできた…」「結局またひび割れてしまった…」といった深刻なトラブルに繋がりかねません。
この記事では、弾性塗料での塗り替えに特化して、
- ひび割れに強い「弾性塗料」のメリットと知られざるデメリット
- 【外壁材別】弾性塗料での塗り替えが「最適」な家と「NG」な家
- 効果と費用を左右する「3つの施工方法」とは?
- 塗り替えの費用相場と、業者選びで絶対に確認すべきこと
などを、塗装のプロが初心者の方にも分かりやすく、とことん丁寧に解説します。この記事を読めば、弾性塗料での塗り替えで後悔しないための全ての知識が身につき、あなたの家に最適な選択ができます。
1. なぜ「ひび割れ」に強い?弾性塗料での塗り替えが選ばれる理由
弾性塗料とは、その名の通り「ゴムのような弾力性(伸縮性)」を持つ特殊な塗料です。一般的な塗料(硬質塗料)が乾燥するとカチカチの硬い膜になるのに対し、弾性塗料は乾燥後も柔軟でしなやかな塗膜を形成します。
この「伸び縮みする」性質こそが、弾性塗料がひび割れ対策に選ばれる最大の理由です。
地震の揺れや温度変化による建物の収縮で外壁材にひび割れ(クラック)が発生しても、塗膜がゴムのように伸びてその動きに追従します。これにより、ひび割れが塗膜の表面に出てくるのを防ぎ、雨水の浸入をシャットアウトするのです。
この「ひび割れ追従性」と、それに伴う「高い防水性」が、弾性塗料での塗り替えがもたらす最大のメリットです。
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2.【最重要】あなたの家はどっち?弾性塗料での塗り替え「OK」と「NG」の外壁
ひび割れに強い弾性塗料ですが、どんな外壁にも使えるわけではありません。外壁材との相性を間違えると、深刻な不具合を引き起こします。
【相性抜群◎】弾性塗料での塗り替えが「おすすめ」な外壁
- モルタル外壁
セメントと砂を塗り固めて作るモルタル壁は、乾燥収縮や建物の揺れで細かなひび割れ(ヘアークラック)が非常に発生しやすい性質があります。弾性塗料は、まさにこのモルタル外壁の弱点を補うために開発されたと言っても過言ではなく、最も効果を発揮する外壁材です。 - ALCパネル外壁
軽量気泡コンクリートであるALCパネルも、ひび割れが発生しやすいため、弾性塗料での塗り替えが有効です。
【原則NG×】弾性塗料での塗り替えが「危険」な外壁
- サイディング外壁(特に古いタイプ)
現在の戸建て住宅で主流のサイディング外壁には、原則として弾性塗料は使用しません。理由は「熱」と「湿気」にあります。- 熱による膨れ
サイディングボードは、夏場の直射日光で高温(80℃近くになることも)になり、蓄熱しやすい性質があります。弾性塗料の柔らかい塗膜は、この熱によって風船のように膨れてしまうリスクがあります。 - 湿気による膨れ
特に、壁内に通気層がない「直貼り工法」で施工された古いサイディングの場合、壁内部の湿気の逃げ場がありません。弾性塗料は湿気を通しにくい(透湿性が低い)ため、この湿気によって内側から塗膜が押し上げられ、膨れや剥がれの原因になります。
- 熱による膨れ
ご自宅の外壁がサイディングの場合、業者から弾性塗料を勧められても、その理由とリスクを十分に確認し、慎重に判断する必要があります。
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3. 効果と費用が変わる!弾性塗料の「3つの塗り替え工法」
弾性塗料の塗り替えには、主に3つの工法(施工方法)があり、どれを選ぶかで費用や耐久性が大きく変わります。
| 工法名 | 弾性の持続期間(目安) | 塗装回数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 単層弾性工法 | 約3~5年 | 3回 | 最も安価で手軽。下塗りの後、弾性塗料を2回塗る。弾性の持続期間は短め。 |
| 微弾性フィラー工法 | 約1~3年 | 3回 | 最も一般的。下塗りに「微弾性フィラー」を使い、上塗りには好きな硬質塗料(シリコン等)を選べる。 |
| 複層弾性工法 | 10~20年 | 5回 | 最も高耐久・高防水。弾性のある中塗り材を2回、上塗りも2回塗る。費用は非常に高額。 |
おすすめは「微弾性フィラー工法」
現在、戸建て住宅の塗り替えで最も一般的に行われているのが「微弾性フィラー工法」です。
- メリット:
- 下塗りで軽微なひび割れを埋めつつ、弾性を持たせることができる。
- 上塗りには、好きなグレードや色の硬質塗料(シリコン、フッ素など)を選べるため、デザインの自由度が高い。
- 上塗り塗料の耐用年数が続く限り、建物を保護できる。
下塗りに弾性を持たせることでひび割れに対応しつつ、上塗りには耐久性や低汚染性など、最新の高性能塗料のメリットを享受できる、バランスの取れた工法です。
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4. 弾性塗料での塗り替え費用、いくらかかる?
弾性塗料の塗り替えは、一般的な塗装より少し割高になる傾向があります。30坪のモルタル住宅で、最も一般的な「微弾性フィラー工法(上塗り:シリコン)」を行った場合の費用相場を見てみましょう。
| 項目 | 数量 | 単価(円) | 金額(円) |
|---|---|---|---|
| 仮設足場(ネット含む) | 180㎡ | 850 | 153,000 |
| 高圧洗浄 | 130㎡ | 200 | 26,000 |
| 下地処理(ひび割れ補修) | 一式 | – | 50,000 |
| 下塗り(微弾性フィラー) | 130㎡ | 800 | 104,000 |
| 中塗り・上塗り(シリコン) | 130㎡ | 2,300 | 299,000 |
| 付帯部塗装(雨樋など) | 一式 | – | 150,000 |
| 諸経費 | 式 | – | 80,000 |
| 小計 | 862,000 | ||
| 消費税(10%) | 86,200 | ||
| 合計金額 | 約95万円 |
※上記はあくまでモデルケースです。ひび割れの状況などによって費用は変動します。
通常のシリコン塗装が70~100万円程度なので、ひび割れ補修費や、材料費が少し高い微弾性フィラーを使用する分、やや高めになることが多いです。
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5. 弾性塗料の塗り替えで後悔しないための注意点
最後に、弾性塗料での塗り替えを成功させるための重要な注意点をまとめます。
- 汚れやすいデメリットを理解する
弾性塗料の柔らかい塗膜は、静電気を帯びやすく、空気中の汚れを引き寄せてしまう性質があります。特に交通量の多い道路沿いなどでは、汚れが目立ちやすくなることを理解しておきましょう。対策として、汚れにくい「低汚染機能」を併せ持った弾性塗料(例:日本ペイント DANシリコンセラ)を選ぶのがおすすめです。 - 弾性塗料の施工実績が豊富な業者を選ぶ
弾性塗料は、塗膜の厚み管理が非常に重要です。薄すぎると弾性効果が発揮されず、厚すぎると膨れの原因になります。弾性塗料の特性を熟知し、適切な施工ができる経験豊富な業者を選ぶことが、成功の絶対条件です。 - 相見積もりで提案内容を比較する
「あなたの家には弾性塗料が必要です」と言われても、すぐに鵜呑みにせず、必ず複数の業者から見積もりを取りましょう。業者によって、ひび割れの原因診断や、提案する工法が異なる場合があります。それぞれの提案を比較し、最も納得できる説明をしてくれた業者に依頼するのが賢明です。
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6. まとめ
外壁のひび割れ対策として非常に有効な弾性塗料での塗り替え。その特性と注意点を正しく理解すれば、雨漏りの不安から解放され、長く安心できる住まいを手に入れることができます。
- 弾性塗料はゴムのように伸び、ひび割れに追従して防水性を高める。
- ひび割れしやすい「モルタル外壁」の塗り替えには最適解。
- 熱や湿気で膨れるリスクがあるため「サイディング外壁」には原則NG。
- 現在の主流は、下塗りに弾性を持たせる「微弾性フィラー工法」。
- 成功のカギは、弾性塗料の施工実績が豊富な信頼できる業者選び。
もし、あなたの家の外壁のひび割れに悩んでいるなら、次の塗り替えではぜひ「弾性塗料」という選択肢を検討してみてください。きっと、その効果に満足できるはずです。
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