HOME » 屋根修理を依頼する前に » 屋根の形状 » 【築50年以上は要注意】瓦の下に大量の土?「土葺き屋根」の構造と地震リスクを専門家が解説
入母屋 屋根

「うちの古い家の屋根、瓦の下に土が敷いてあるらしい…」
「昔の瓦屋根は土で葺いてるって本当?地震は大丈夫なの?」

築年数の古い日本家屋にお住まいの方や、ご実家の屋根について、こんな話を聞いたことはありませんか?

実はこれ、昭和初期まで主流だった「土葺き(どぶき/つちぶき)」という伝統的な屋根工法のこと。文字通り、瓦を固定するために大量の土を使うのが特徴です。

先人の知恵が詰まった工法ですが、地震大国である現代の日本では、耐震性の観点から大きなリスクを抱えていることも事実です。

この記事では、そんな「土葺き屋根」の構造から、メリット・デメリット、そして最も重要な地震への影響と安全なリフォーム方法まで、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。

「土葺き」とは?屋根の構造を現代の工法と比較

瓦 葺き替え

そもそも「土葺き」とは、どのような構造なのでしょうか。現在主流の「引掛け桟瓦葺き(ひっかけさんかわらぶき)」と比較すると、その違いは一目瞭然です。

  • 土葺き工法(湿式工法)
    屋根の骨組み(野地板)の上に、葺き土(ふきつち)と呼ばれる粘土質の土を敷き詰め、その土の粘着力で瓦を一枚一枚固定していく工法です。まさに職人の腕が試される、昔ながらの技術です。
  • 引掛け桟瓦葺き工法(乾式工法)
    現在の標準的な工法です。野地板の上に防水シートを敷き、瓦桟(かわらざん)という細い木材を打ち付けます。その桟木に瓦のツメを引っ掛け、釘やビスで固定していきます。

【構造の比較図】

構造の層土葺き工法(昔)引掛け桟瓦葺き工法(現代)
表面
固定材葺き土(大量の土)瓦桟(木材)+釘・ビス
下地野地板防水シート + 野地板

より詳しく知りたい方は
下記よりお問い合わせください。

フリーダイヤル 0120-905-454 (平日・土曜 9:00~18:00)

なぜ土を使っていた?土葺き工法のメリット

屋根 葺き替え

今ではリスクが指摘される土葺きですが、当時は多くのメリットがありました。

  • 優れた断熱性と遮音性
    屋根に乗せられた分厚い土の層が、夏の日差しや冬の冷気をシャットアウト。天然の断熱材として機能し、室内の温度を快適に保ちます。また、雨音を吸収する遮音効果も非常に高いです。
  • 高い耐風性
    土と瓦の総重量で屋根全体をどっしりと押さえつけるため、並大抵の風では瓦が飛散しにくいというメリットがありました。
  • 雨漏りへの耐性
    万が一、瓦の隙間から雨水が侵入しても、葺き土が水分を吸収してくれるため、すぐに雨漏りには繋がりませんでした。

土葺きが現代で使われなくなった最大の理由「重さ」と「地震リスク」

多くのメリットがある一方で、土葺き工法は現代の家づくりでは採用されません。その最大の理由は、屋根が圧倒的に重くなることによる、地震への脆弱性です。

関東大震災や阪神・淡路大震災では、この重い土葺き屋根の家屋が数多く倒壊し、甚大な被害をもたらしました。屋根が重いと、地震の揺れが増幅され、建物を支える柱に大きな負担がかかるためです。

どれくらい重い?屋根材の重量を比較

土葺き屋根がいかに重いか、現在の屋根材と比較してみましょう。

屋根の種類1㎡あたりの重量の目安100㎡の屋根での総重量
土葺き瓦屋根約70kg約7,000kg(7トン)
現代の瓦屋根(引掛け桟)約45kg約4,500kg(4.5トン)
スレート屋根約20kg約2,000kg(2トン)
金属屋根(ガルバリウム鋼板)約5kg約500kg(0.5トン)

一般的な30坪程度の家(屋根面積100㎡)で考えると、土葺き屋根は約7トンもの重りが屋根の上に乗っているのと同じ状態です。これは、金属屋根の14倍もの重さになります。地震の際にこの重さが家全体を揺さぶることを想像すれば、その危険性がお分かりいただけるでしょう。

自宅が土葺きかも?リフォームを検討すべきサイン

ご自宅が土葺き屋根の可能性がある場合、早めの対策が推奨されます。

  • 築年数が50年以上(特に昭和初期以前の建築)
  • 過去に大きな地震を経験した地域で、瓦のズレや棟の歪みが目立つ
  • 専門業者から「土葺き屋根ですね」と指摘されたことがある

古い土葺き屋根は、経年劣化で土が流出したり、痩せてしまったりして、瓦の固定力が弱まっている可能性も高いです。地震だけでなく、台風時の瓦の落下や雨漏りのリスクも高まっています。

土葺き屋根のリフォーム方法と費用:「葺き替え」が基本

土葺き屋根の耐震性問題を根本的に解決するには、重い土と瓦をすべて撤去し、軽量な屋根に交換する「葺き替え工事」が唯一の方法です。

通常の葺き替えと異なり、土葺き屋根の葺き替えには以下の追加費用が発生するため、総額が割高になる傾向があります。

  • 葺き土の撤去・処分費用
  • 下地調整費用(長年の重みで歪んだ屋根下地を平らにする工事)

【30坪(100㎡)の土葺き屋根→金属屋根への葺き替え費用目安】

工事項目費用の目安(税抜)
土葺き屋根の撤去・処分500,000円
下地調整180,000円
野地板重ね張り310,000円
防水シート90,000円
金属屋根材(本体+役物)910,000円
諸経費150,000円
合計(足場代別途)2,140,000円~

※上記はあくまで一例です。建物の状況により費用は変動します。

この工事により、屋根の重さは約7トンから1.6トン以下に軽量化され、建物の耐震性は劇的に向上します。

まとめ:家族の安全のために、一度屋根の健康診断を

土葺き工法は、かつての日本の気候風土に適した素晴らしい技術でした。しかし、地震活動が活発な現代の日本においては、その「重さ」が大きなリスクとなっています。

もしご自宅が築50年を超えている、あるいは土葺き屋根の可能性がある場合は、家族の命と財産を守るために、一度専門家による屋根の無料点検を受けてみることを強くおすすめします。

早期に屋根の状態を把握し、軽量な屋根へのリフォームを計画することが、未来の巨大地震への最も有効な備えとなるのです。

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