HOME » 屋根材の種類と特徴 » ガルバリウム鋼板屋根 » 【瓦棒葺き屋根の教科書】ガルバリウム鋼板の瓦棒葺き|勾配の限界と雨漏りリスクを徹底解説

ガルバリウム鋼板の屋根リフォームを検討する際、「縦葺き」という言葉を耳にすることがあるかと思います。その縦葺きの中でも、特に古くからある工法が「瓦棒葺き(かわらぼうぶき)」です。

トタン屋根の時代から続く伝統的な工法ですが、実は現代の主流である「立平葺き(たてひらぶき)」とは構造が大きく異なり、特有の弱点も抱えています。

  • 「瓦棒葺きって、立平葺きと何が違うの?」
  • 「緩い勾配の屋根でも使える?」
  • 「うちの屋根が瓦棒葺きみたいだけど、どうメンテナンスすればいい?」

この記事では、そんな「瓦棒葺き」に徹底的にフォーカス。その構造から、施工に最低限必要な屋根勾配、そして現代のリフォームで知っておくべき最適なメンテナンス方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。

そもそも「瓦棒葺き」とは?立平葺きとの構造の違い

瓦棒葺きは、屋根のてっぺん(棟)から軒先に向かって縦に金属板を葺いていく「縦葺き」の一種です。その最大の特徴は、屋根材を固定するために「心木(しんぎ)」と呼ばれる垂木(木材)を使う点にあります。

【瓦棒葺きの構造】

  1. 屋根の下地(野地板)の上に、等間隔で心木を打ち付ける。
  2. 心木と心木の間に、溝型に加工したガルバリウム鋼板をはめ込む。
  3. 心木の上から「キャップ」と呼ばれる金属板を被せ、釘で固定する。

一方、現在主流の「立平葺き」は、この心木を使いません。金属板の端を折り曲げ加工し、板金同士をはめ込んだり、折り曲げたり(ハゼ締め)して連結させていきます。

【瓦棒葺き vs 立平葺き 構造比較】

比較項目瓦棒葺き(旧工法)立平葺き(現主流)
心木あり(木材)なし
接合方法心木にキャップを被せて釘で固定金属板同士を折り曲げて連結
構造上の弱点心木が腐食するリスクがある腐食する木材がないため、耐久性が高い
施工性比較的シンプル施工が容易でスピーディー(嵌合式の場合)

この「心木の有無」が、両者の性能を分ける最も大きな違いです。

より詳しく知りたい方は
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【雨漏りを防ぐ最低条件】瓦棒葺きに必要な屋根勾配

ガルバリウム鋼板 屋根

屋根の角度である「勾配」は、雨水をスムーズに流すために非常に重要です。屋根材ごとに、雨漏りを起こさないための「最低勾配」が決められています。

瓦棒葺きの場合、最低でも「1寸勾配(約5.7度)」以上の傾斜が必要です。

  • 1寸勾配でもOKな理由
    縦葺きは、雨水が上から下へ一直線に流れるため、屋根材の継ぎ目で水が滞留しにくい構造です。そのため、横葺き(最低3寸勾配が必要)などに比べて緩やかな勾配にも対応できます。
  • なぜ1寸未満の緩勾配は危険なのか?
    1寸勾配を下回るような、ほぼ水平に近い屋根に瓦棒葺きを施工すると、雨水の流れが非常に緩やかになります。すると、毛細管現象や強風によって、キャップと本体のわずかな隙間から雨水が内部に侵入し、雨漏りを引き起こすリスクが格段に高まります。

さらに緩い勾配に対応できる「立平葺き」

ちなみに、心木を使わない「立平葺き」は、製品によっては「0.5寸勾配(約2.8度)」という、さらに緩やかな勾配にも対応可能です。これは、金属同士を強固に連結させる構造により、瓦棒葺きよりも高い水密性を確保できるためです。

【縦葺きの最低勾配まとめ】

葺き方最低勾配の目安
瓦棒葺き1寸(約5.7度)以上
立平葺き0.5寸(約2.8度)以上

瓦棒葺きのメリットと、知っておくべき「致命的な弱点」

瓦棒葺きにはメリットもありますが、現代の視点から見ると、それを上回る大きなデメリットが存在します。

メリット

  • 縦葺きなので雨水がスムーズに流れる(適切な勾配の場合)。
  • 構造がシンプルで、かつては広く普及していた。

デメリット(弱点)

  • 【最大の弱点】心木が木材のため、経年で腐食するリスクがある。
    キャップの釘穴や接合部の隙間からわずかに侵入した水分が、内部の心木を徐々に腐食させます。この腐食した木材が雨漏りの直接的な原因となるケースが非常に多く、瓦棒葺き屋根の寿命を決定づける最大の弱点です。
  • 現代では立平葺きが主流
    心木の腐食リスクがなく、より施工が簡単で水密性の高い「立平葺き」が登場したことにより、現在の新築で瓦棒葺きが採用されることはほとんどありません。

既存の「瓦棒葺き屋根」はどうメンテナンスする?3つの方法と費用

ご自宅の屋根がすでに瓦棒葺きである場合、どのようなメンテナンスが必要になるのでしょうか。状態に応じた3つの方法と、その費用相場をご紹介します。

① 塗装メンテナンス【費用相場:30万~50万円】

  • タイミング:10年~15年
  • 内容:表面のサビや塗膜の劣化が見られる場合のメンテナンスです。高圧洗浄で汚れを落とし、サビ止めを塗布した上で、専用の塗料で再塗装します。
  • 注意点:あくまで表面の保護が目的です。内部の心木の腐食を止めることはできません。

② カバー工法【費用相場:80万~120万円】

  • タイミング:20年~30年(心木の腐食が軽微な場合)
  • 内容:既存の瓦棒葺き屋根の上から、新しい防水シートと、軽量な「立平葺き」の屋根材を被せる工法です。
  • メリット:既存屋根の解体・処分費用がかからないため、葺き替えより安価で工期も短くなります。
  • 注意点心木の腐食が激しい場合は施工できません。腐った下地の上に新しい屋根を被せても意味がないため、必ず事前の下地調査が必要です。

③ 葺き替え工事【費用相場:100万~150万円】

  • タイミング:雨漏りが発生している、または心木の腐食が激しい場合
  • 内容:既存の瓦棒葺き屋根(心木も含む)をすべて撤去し、下地を補修。新しい防水シートと「立平葺き」屋根を施工します。
  • メリット心木の腐食問題を根本的に解決できる、最も確実で推奨されるリフォーム方法です。
  • ポイント:費用は最も高くなりますが、屋根の寿命をリセットし、長期的な安心を手に入れることができます。

まとめ:瓦棒屋根のリフォームは「立平葺きへの葺き替え」が最適解

ガルバリウム鋼板の「瓦棒葺き」は、緩勾配にもある程度対応できる縦葺き工法ですが、その構造上「心木の腐食」という避けられない弱点を抱えています。

  • 瓦棒葺き:心木(木材)を使う旧工法。最低1寸勾配が必要。心木の腐食リスクがある。
  • 立平葺き:心木を使わない現主流工法。0.5寸勾配にも対応可能。腐食リスクが低く高耐久。

もしご自宅の屋根が瓦棒葺きで、サビや雨漏りなどの劣化が見られる場合は、この機会に心木の腐食問題を根本から解決できる「立平葺きへの葺き替え工事」を検討することをおすすめします。

どの工事が最適か判断するためにも、まずは信頼できる屋根の専門業者に現状を正確に診断してもらうことが、失敗しないリフォームの第一歩です。

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「雨漏りが気になっていましたが、しっかりと原因を特定し、丁寧に施工していただきました」(40代・女性)

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