「あれ?庭に白い塊が落ちてる…もしかして屋根の漆喰?」
「瓦屋根の白い部分(漆喰)が、なんだかポロポロ崩れてきている気がする…」
「漆喰が崩れると、雨漏りするって本当?修理は必要なの?」
日本の伝統的な瓦屋根に欠かせない「漆喰(しっくい)」。屋根の棟(むね:屋根の頂上部分)や瓦の隙間を美しく埋め、雨風から屋根内部を守る重要な役割を担っています。しかし、この漆喰も永遠ではありません。経年劣化や自然の影響で、ひび割れたり、剥がれたり、そして崩れてしまうことがあります。
「漆喰が崩れる原因って何なの?」
「少し崩れたくらいなら、放っておいても大丈夫?」
「もし修理するとしたら、どんな方法があって、費用はどれくらいかかるの?」
この記事では、そんな屋根の漆喰の崩れに関するあらゆる疑問や不安を解消するため、
「なぜ屋根の漆喰は崩れてしまうのか?その主な原因とは?」
「崩れた漆喰を放置する本当の危険性(雨漏り、棟の歪みなど)」
「漆喰の崩れに対する正しい補修方法と、その費用の目安」
「漆喰を使わない新しい工法もあるって本当?」
について、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します!
屋根の漆喰とは?~瓦屋根を守る白い壁の役割~
まず、屋根における漆喰の役割を簡単におさらいしましょう。
漆喰とは、主に消石灰(水酸化カルシウム)を原料とし、麻すさ(麻の繊維)や海藻糊などを混ぜて作られる、古くから日本で使われてきた塗り壁材です。耐火性や調湿性に優れ、美しい白色が特徴です。
瓦屋根では、主に以下の部分に使用されます。
- 棟瓦(むねがわら)の固定と防水
- 屋根の頂上部や隅棟(くだりむね)など、瓦が何段にも積まれている「棟」と呼ばれる部分。
- 棟内部には、瓦を固定し高さを調整するための「葺き土(ふきつち)」または「棟土(むねつち)」と呼ばれる土が詰められています。
- 漆喰は、この葺き土が雨水で流れ出さないように表面を保護し、さらに熨斗瓦(のしがわら:棟に使われる平たい瓦)同士の隙間や、棟と平瓦(屋根面に使われる瓦)との隙間を埋めて、雨水の浸入を防ぐ役割を担っています。
- 瓦のズレ防止(補助的な役割)
- 漆喰には接着効果もあり、瓦同士を固定する補助的な役割も果たします。
- 美観の向上
- 瓦の黒やいぶし銀の色と、漆喰の白色のコントラストが、瓦屋根の美しい外観を引き立てます。
つまり、漆喰は単なる飾りではなく、瓦屋根の防水性、耐久性、そして美観を維持するために不可欠な存在なのです。
なぜ屋根の漆喰は崩れてしまうのか?その主な原因
頑丈そうに見える漆喰も、常に雨風や紫外線、温度変化にさらされる過酷な環境にあるため、年月と共に劣化し、崩れてしまうことがあります。
- 経年劣化による漆喰自体の脆化(ぜいか)
- 漆喰は施工後、徐々に硬化していきますが、長年の風雨や紫外線の影響、温度変化による伸縮の繰り返しにより、徐々に弾力性を失い、脆くなっていきます。
- 表面に細かなひび割れが生じ、そこから雨水が浸み込むと、内部から劣化が進行し、ポロポロと剥がれ落ちやすくなります。
- 棟内部の葺き土(棟土)の劣化・流出
- 漆喰が劣化した部分から雨水が浸入すると、内部の葺き土が水分を含んで膨張したり、流れ出したりします。
- 葺き土が痩せたり、不安定になったりすると、その上に塗られている漆喰も支えを失い、ひび割れたり剥がれたり、崩れたりします。
- 建物の揺れ(地震・強風など)
- 地震や台風時の強風によって建物が揺れると、屋根や棟瓦もわずかに動きます。
- この動きが繰り返し漆喰に加わることで、ひび割れが生じたり、既存のひび割れが拡大したりして、崩れの原因となります。
- 棟瓦のズレや歪み
- 何らかの原因で棟瓦自体がズレたり歪んだりすると、漆喰に応力がかかり、ひび割れや剥がれを引き起こします。
- これは、漆喰の崩れの原因であると同時に、漆喰が崩れた結果として棟瓦のズレが悪化するという悪循環にも繋がります。
- 施工不良
- 新築時や前回の補修時の漆喰の塗り方(厚み、下地処理など)が不適切だった場合、早期に劣化し、崩れやすくなることがあります。
- 例えば、漆喰を厚く塗りすぎたり、葺き土が十分に乾燥していない状態で施工したりすると、剥離しやすくなります。
これらの原因が複合的に絡み合い、漆喰の崩れは進行していきます。
崩れた漆喰を放置する危険性:雨漏り、そして棟の倒壊リスクも!
「漆喰が少し崩れたくらいなら、まだ大丈夫だろう」と安易に考えて放置してしまうと、以下のような深刻な事態を招く可能性があります。
- 雨漏りの発生
- 漆喰が崩れて隙間ができると、そこから雨水が棟内部の葺き土に直接浸み込みます。
- 葺き土が水分を吸収し続けると、やがて飽和状態になり、屋根裏へと雨水が浸入し、雨漏りを引き起こします。
- 雨漏りは、天井や壁のシミ、カビの発生だけでなく、建物の構造材を腐食させ、住宅の寿命を縮める原因となります。
- 棟瓦の歪み・ズレ・落下
- 漆喰には、棟瓦を固定する補助的な役割もあります。漆喰が崩れることで、熨斗瓦の固定力が弱まり、地震や強風で瓦がズレたり、歪んだり、最悪の場合、落下したりする危険性が高まります。
- 落下した瓦が人や物に当たれば、大きな事故に繋がる可能性も否定できません。
- 棟の崩壊リスク
- 漆喰の保護を失った葺き土は、雨水によって徐々に流れ出してしまいます。
- 葺き土が痩せてしまうと、棟瓦全体を支える力が弱まり、棟そのものが歪んだり、崩壊したりする危険性があります。
- 屋根下地の劣化
- 雨漏りによって屋根裏に湿気がこもると、屋根材の下にある野地板(下地合板)や垂木(たるき:屋根の骨組み)といった木材が腐食しやすくなります。
- 修理費用の増大
- 初期の漆喰の崩れであれば、比較的簡単な補修で済むことが多いです。しかし、放置して雨漏りや棟の歪み、下地の腐食にまで被害が拡大すると、大規模な屋根修理が必要となり、費用が大幅に高額になってしまいます。
漆喰の崩れは、屋根からのSOSサインです。小さな崩れでも見逃さず、早めに対処することが、結果的に大きな被害と出費を防ぐことに繋がります。
屋根の漆喰崩れ、どう直す?正しい補修方法と費用の目安
崩れてしまった屋根の漆喰は、どのように補修するのでしょうか? 主な補修方法と、おおよその費用感を見ていきましょう。
1. 漆喰詰め直し工事(しっくいつめなおしこうじ)
- 内容
- 既存の劣化した漆喰を丁寧に剥がし(ケレン作業)、清掃します。
- 必要に応じて、下地となる葺き土の状態を確認し、補修・調整します。
- 新しい漆喰を、適切な厚みと位置を守りながら、瓦と葺き土の隙間にしっかりと詰め直していきます。
- ポイント: 漆喰が瓦よりも外側にはみ出さないように施工することが重要です。はみ出すと雨水の流れを妨げ、かえって雨漏りの原因になることがあります。
- こんな場合に有効: 漆喰自体の劣化や部分的な剥がれ・崩れで、棟瓦の大きなズレや歪みがない場合。
- 費用相場の目安:1メートルあたり 約4,000円~7,000円程度
- これに加えて、足場代(必要な場合、一般的な戸建てで約15万円~25万円程度)や諸経費がかかります。
- 補修する棟の長さや状態、足場の有無によって総額は大きく変動します。
- 注意点
- 「漆喰詰め増し工事」という、既存の漆喰の上に新しい漆喰を塗り重ねるだけの簡易的な補修方法を提案する業者もいますが、これは根本的な解決にならず、古い漆喰が剥がれる際に新しい漆喰も一緒に剥がれてしまう可能性が高いため、推奨されません。必ず、古い漆喰を剥がしてから詰め直す「漆喰詰め直し工事」を選びましょう。
2. 棟取り直し工事(むねとりなおしこうじ)
- 内容
- 漆喰の崩れだけでなく、棟瓦に大きなズレや歪みが生じている場合や、内部の葺き土が著しく劣化・流出してしまっている場合に行う本格的な修理方法です。
- 一度、棟瓦を全て解体し、劣化した葺き土や漆喰を撤去します。
- 新しい葺き土(または南蛮漆喰)で土台を作り直し、解体した瓦を再度積み直し、漆喰で仕上げます。(場合によっては、新しい棟瓦を使用することもあります)
- この際、棟の芯に補強のための鉄筋や銅線を入れるなど、耐震性を高める「ガイドライン工法」に準拠した施工を行うことが推奨されます。
- こんな場合に有効: 漆喰の崩れが広範囲で、棟瓦のズレや歪みが著しい場合。雨漏りが発生している場合。葺き土の劣化が深刻な場合。
- 費用相場の目安:1メートルあたり 約8,000円~15,000円程度
- こちらも足場代や諸経費が別途かかります。棟の形状や瓦の種類、補強の有無などによって費用は大きく変動します。
- ポイント: 漆喰が崩れている原因が棟自体の問題にある場合、この棟取り直し工事を行わないと、漆喰だけを補修してもすぐに再発してしまいます。
【表】漆喰の崩れ 補修方法と費用目安
補修方法 | 主な作業内容 | こんな場合に有効 | 1メートルあたりの費用目安 | 足場代・諸経費 |
---|---|---|---|---|
漆喰詰め直し工事 | 既存漆喰の撤去、清掃、新しい漆喰の詰め直し | 漆喰自体の劣化、部分的な剥がれ・崩れ。棟の大きな歪みなし。 | 約4,000円~7,000円 | 別途必要 |
棟取り直し工事 | 棟瓦の解体、葺き土・旧漆喰の撤去、新しい葺き土(または南蛮漆喰)での土台作り、棟瓦の積み直し、漆喰仕上げ(ガイドライン工法推奨) | 漆喰の広範囲な崩れ、棟瓦の大きなズレ・歪み、葺き土の著しい劣化、雨漏り発生時など。根本的な修理。 | 約8,000円~15,000円 | 別途必要 |
※上記の費用はあくまで一般的な目安であり、実際の費用は屋根の形状、棟の長さや数、劣化状況、使用する材料、足場の有無、地域、依頼する業者などによって大きく変動します。必ず複数の専門業者から詳細な見積もりを取り、比較検討しましょう。
漆喰を使わない新しい棟の工法もある?「乾式工法」とは
伝統的な「湿式工法(葺き土と漆喰を使う工法)」の課題を解決するために、近年では「乾式工法(かんしきこうほう)」と呼ばれる、葺き土や漆喰を一切使用しない棟の施工方法も登場しています。
乾式工法の特徴
垂木(たるき)や専用の補強金具で棟の下地を形成し、その上を防水性の高い粘着テープ(ブチルテープなど)で覆い、専用の乾式棟瓦や板金で仕上げます。
メリット
- 葺き土や漆喰を使わないため、棟部分が軽量化され、建物への負荷を軽減できます(耐震性向上)。
- 漆喰の剥がれや崩れといったメンテナンスが不要になります。
- 防水性・耐久性が向上するとされています。
デメリット
- 初期費用が湿式工法に比べて高くなる場合があります。
- 施工できる業者が限られる場合があります。
採用例
近年人気の軽量な樹脂混入繊維補強軽量セメント瓦(例:ケイミュー社のROOGAなど)では、この乾式工法が標準となっていることが多いです。
漆喰のメンテナンスの手間を減らしたい、より耐震性の高い屋根にしたい、といった場合には、この乾式工法も検討してみる価値があるでしょう。
屋根の漆喰崩れ、修理業者選びの重要ポイント
屋根の漆喰補修は、見た目以上に専門的な知識と技術が必要です。不適切な修理は、かえって雨漏りを招いたり、すぐに再発したりする原因となります。
信頼できる業者を選ぶためのチェックポイント
- 瓦屋根の施工実績が豊富か: 特に漆喰工事や棟工事の経験が重要です。
- 建設業許可や専門資格の有無: 一定の技術力や信頼性の目安になります(かわらぶき技能士など)。
- 現地調査が丁寧で、原因の説明が分かりやすいか: なぜ漆喰が崩れたのか、どのような補修が必要なのか、納得できるまで説明してくれる業者を選びましょう。
- 見積書の内訳が明確か: 使用する材料、作業内容、数量、単価などが具体的に記載されているか確認します。
- 複数の業者から相見積もりを取る: 費用だけでなく、提案内容や対応の質も比較検討しましょう。
- 「すぐに工事しないと危ない」と不安を煽る業者には注意: 漆喰が多少崩れても、すぐに棟が倒壊するわけではありません。冷静に判断しましょう。(ただし、明らかに棟が大きく歪んでいる場合は早急な対応が必要です)
- 施工後の保証やアフターフォローがしっかりしているか。
特に、突然訪問してきて「屋根の漆喰が剥がれていますよ。今なら安く修理できます」などと勧誘してくる業者には注意が必要です。悪質な業者の場合、不必要な高額な工事を契約させられたり、手抜き工事をされたりするトラブルが後を絶ちません。
まとめ:屋根の漆喰の崩れは放置せず、適切な診断と修理で安心な住まいを!
屋根の漆喰の崩れは、見た目の問題だけでなく、雨漏りや棟の歪み、さらには棟の倒壊といった深刻な事態を引き起こす可能性を秘めた危険なサインです。
屋根の漆喰崩れで後悔しないための重要アクション
- 漆喰が崩れる原因(経年劣化、葺き土の劣化、建物の揺れなど)を理解する。
- 崩れた漆喰を放置するリスク(雨漏り、棟の歪み・落下、修理費用の増大)を認識する。
- 補修方法は、主に「漆喰詰め直し工事」と「棟取り直し工事」があることを知る。
- 「漆喰詰め増し」はNG。必ず古い漆喰を撤去してから詰め直す。
- 棟自体の問題が原因の場合は、「棟取り直し工事」で根本的に修理する。
- 漆喰を使わない「乾式工法」も選択肢の一つ。
- 修理費用は状態や工法により大きく変動するため、複数の専門業者から見積もりを取る。
- 信頼できる瓦屋根専門の業者に依頼することが最も重要。
「うちの屋根の漆喰、大丈夫かな?」と少しでも気になったら、まずは信頼できる専門業者に点検を依頼し、適切なアドバイスを受けることから始めましょう。早期発見・早期対応が、結果的に大切な住まいを長持ちさせ、大きな出費を防ぐことに繋がります。この記事が、あなたの屋根の漆喰トラブル解決の一助となれば幸いです。
クイック屋根工事
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「雨漏りが気になっていましたが、しっかりと原因を特定し、丁寧に施工していただきました」(40代・女性)
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