「屋根のルーフィングって何?」
「“透湿ルーフィング”が良いって聞いたけど、本当に雨漏りしないの?」
「普通のルーフィングと何が違うの?うちの屋根にも使える?」
マイホームを長持ちさせるために、屋根は非常に重要な役割を担っています。そして、その屋根の性能を陰で支えているのが「ルーフィング(防水紙)」です。特に最近注目されているのが、「透湿ルーフィング」という種類のルーフィング。
「湿気は通すけど、雨水は通さない」という、なんだか魔法のようなこのシート。本当にそんなことが可能なのでしょうか?そして、私たちの屋根にどんなメリットをもたらしてくれるのでしょうか?
この記事では、
「透湿ルーフィングって、そもそも何?」
「雨漏りの心配はないの?本当に効果があるの?」
「どんな種類があって、どうやって選べばいいの?」
といった疑問を解消するため、透湿ルーフィングの基本から、メリット・デメリット、気になる雨漏りリスク、そして賢い選び方まで、初心者の方にも分かりやすく、とことん掘り下げて解説します!
まずは基本から!「ルーフィング」とは?屋根の隠れた守護神
「ルーフィング」という言葉、初めて聞く方も多いかもしれません。これは、屋根材(瓦、スレート、金属板など)の下に敷かれる防水シートのことで、「下葺き材(したぶきざい)」とも呼ばれます。
【ルーフィングの主な役割】
- 二次防水
屋根材の隙間や割れ目から雨水が浸入した場合に、建物内部への水の到達を防ぐ、最後の砦としての役割。 - 野地板(のじいた)の保護
屋根の下地である野地板(木製の板)を雨水や湿気から守り、腐食や劣化を防ぐ。
普段は屋根材の下に隠れていて目に触れることはありませんが、ルーフィングは屋根の防水性能を左右する非常に重要な部材なのです。新築時やリフォーム時に、住宅会社から詳しい説明がないことも多いのですが、実は屋根材と同じくらい、いや、それ以上に大切な存在と言っても過言ではありません。
「透湿ルーフィング」とは?~呼吸する防水シートの秘密~
さて、本題の「透湿ルーフィング」です。これは、従来のルーフィングの防水機能に加えて、「湿気を通す(透湿性)」という特殊な機能を持ったルーフィングシートのことです。
【透湿ルーフィングのメカニズム:なぜ雨は通さず、湿気は通すの?】
透湿ルーフィングは、微細な孔(あな)が無数に空いた特殊な素材で作られています。
- 雨水の浸入を防ぐ
雨水の粒子は、この微細な孔よりも大きいため、シートの表面でブロックされ、内部へは浸入できません。 - 湿気(水蒸気)は通す
一方、湿気(水蒸気)の粒子は雨水の粒子よりもはるかに小さいため、この微細な孔を通り抜けて外部へ排出されます。
例えるなら、高性能なアウトドアウェア(例:ゴアテックス素材のレインウェア)と同じような原理です。外からの雨は防ぎつつ、体から出る汗(水蒸気)は外に逃がしてムレを防ぐ、あの感じです。
「非透湿ルーフィング」との違いは?
従来の一般的なルーフィング(主にアスファルト系ルーフィング)は、「非透湿性」です。つまり、雨水も湿気も通しません。
特徴 | 透湿ルーフィング | 非透湿ルーフィング(従来型) |
---|---|---|
雨水の浸入 | 防ぐ | 防ぐ |
湿気の透過 | 通す(屋外へ排出) | 通さない(湿気がこもりやすい) |
主な素材 | 高分子系シート(ポリエチレン、ポリプロピレンなど) | アスファルト、改質アスファルト |
重さ | 軽い(アスファルト系の約1/3程度) | 重い |
価格 | 比較的高価(非透湿性の約2倍程度) | 比較的安価 |
耐久性 | 高い(50年~60年程度が期待できるものも) | 製品による(15年~30年程度) |
国内シェア | 約5%程度 | 約95%程度 |
日本では、屋根用ルーフィングのシェアは、まだ圧倒的に非透湿性のアスファルト系ルーフィングが高いのが現状です。しかし、建物の長寿命化や快適性向上の観点から、透湿ルーフィングの重要性が見直されつつあります。
▼ 一般的なルーフィングについてはこちらもご参照ください
なぜ透湿性が重要?屋根裏の湿気が招くトラブルとは
「屋根に湿気がこもると、何が悪いの?」と思われるかもしれません。実は、屋根裏に湿気が滞留すると、様々な問題を引き起こす可能性があります。
- 結露の発生
暖かい空気は多くの湿気を含むことができます。室内の暖かい空気が屋根裏に上昇し、冷たい外気の影響で屋根材や野地板の裏側が冷やされると、そこで結露が発生しやすくなります。 - 野地板の腐食・劣化
結露によって野地板が常に湿った状態になると、木材が腐りやすくなり、強度が低下します。これは、屋根材を固定している釘やビスの効きが悪くなり、屋根材のズレや飛散、さらには雨漏りに繋がる可能性があります。 - カビの発生
湿気が多い環境はカビの温床です。屋根裏にカビが発生すると、アレルギーの原因になったり、木材の腐朽を早めたりします。 - 断熱材の性能低下
屋根裏に敷設されている断熱材が湿気を含むと、断熱性能が低下し、夏は暑く冬は寒い家になってしまう可能性があります。
透湿ルーフィングは、これらの問題を軽減するのに役立ちます。 野地板や断熱材から発生する湿気を外部に排出し、屋根裏の乾燥状態を保つことで、結露を防ぎ、建物の耐久性を高める効果が期待できるのです。
透湿ルーフィングは雨漏りしやすいってホント?専門家の見解と実験結果
「湿気を通すなら、雨水も入ってきちゃうんじゃないの?」という不安は、透湿ルーフィングについてよく聞かれる疑問の一つです。実際、住宅業界では「透湿ルーフィングは雨漏りしやすいのでは?」という噂が流れていることもあるようです。
しかし、専門家や研究機関の見解は異なります。
- ある屋根専門業者の報告では
長年透湿ルーフィングの施工に携わってきた専門家は、「実際に(透湿ルーフィングが原因で)雨漏りした事例は見たことがない」と証言しています。事実、その業者が手がけた築10年の透湿ルーフィングを使用した屋根を点検したところ、雨漏りの形跡は一切なく、健全な状態が保たれていたとの報告があります。 - 公的な研究機関による厳しい条件下での実験結果も
国内の建築関連の研究機関が、特殊な強風雨発生装置を用いて行った実験があります。この実験では、屋根材を一切施工しない状態で、一般的なアスファルト系ルーフィング(非透湿性)と透湿ルーフィングのそれぞれに、直接かつ強力に水を吹き付けるという、非常に過酷な条件でテストが行われました。
その結果、散水後に透湿ルーフィングを剥がして下地の合板を調べたところ、雨水が浸入した痕跡は全く確認されなかったとのことです。この実験は、国の研究プロジェクトの一環として実施されたものであり、その信頼性は高いと言えるでしょう。
参考:国土交通省 国土技術政策総合研究所
これらの情報から、「透湿ルーフィングだから雨漏りしやすい」という噂は、必ずしも正しくないと言えそうです。
むしろ、適切に施工されれば、透湿ルーフィングは野地板の乾燥を促進し、長期的に見て雨漏りのリスクを低減する可能性すらあります。
透湿ルーフィングのメリット・デメリットを整理
ここで、透湿ルーフィングのメリットとデメリットを改めて整理しておきましょう。
【透湿ルーフィングのメリット】
- 結露防止効果: 屋根裏の湿気を外部に排出し、結露の発生を抑制します。
- 野地板の耐久性向上: 野地板を乾燥状態に保ち、腐食やカビの発生を防ぎ、屋根全体の寿命を延ばす効果が期待できます。
- 建物の長寿命化: 構造材の劣化を防ぎ、住宅全体の耐久性向上に貢献します。
- 軽量性: アスファルト系ルーフィングに比べて軽いため、建物への負荷を軽減できます。
- 快適な室内環境の維持: 湿気による不快感を軽減し、健康的な住環境づくりに役立つ可能性があります。
- 長期的なコストパフォーマンス: 初期費用は高いものの、耐用年数が長く(50年以上期待できる製品も)、野地板の交換などの大規模修繕のリスクを減らせるため、長期的に見るとコストパフォーマンスが良い場合があります。
【透湿ルーフィングのデメリット(注意点)】
- 初期費用が高い: 一般的なアスファルト系ルーフィングに比べて、材料費・施工費ともに高価になる傾向があります。
- 正しい施工技術が必要: 透湿性能を十分に発揮させるためには、通気層の確保が不可欠です。屋根材と透湿ルーフィングの間に適切な通気層を設け、その空気の入口と出口を確保する設計・施工が必要です。これが不適切だと、透湿性能が活かされません。
- 屋根カバー工法には不向き: 既存の屋根材の上に新しい屋根材を重ねるカバー工法の場合、既存のルーフィングが残るため、透湿ルーフィングの透湿性が活かせません。透湿ルーフィングへの変更は、基本的に葺き替え工事での対応となります。
- 屋根材との相性: 屋根材の種類によっては、通気層の確保が難しい場合や、透湿ルーフィングのメリットが活かしきれない場合があります。
- まだ普及率が低い: 国内シェアが低いため、取り扱っている業者が限られたり、施工経験が少ない業者もいる可能性があります。
より詳しく知りたい方は
下記よりお問い合わせください。
フリーダイヤル 0120-905-454 (平日・土曜 9:00~18:00)
透湿ルーフィングを活かす「屋根通気工法」とは?
透湿ルーフィングの性能を最大限に引き出すために欠かせないのが、「屋根通気工法」です。これは、透湿ルーフィングと屋根材の間に意図的に通気層(空気の通り道)を設ける工法です。
【屋根通気工法の仕組みと効果】
- 湿気の排出: 野地板から透湿ルーフィングを通過してきた湿気は、この通気層を通って外部へ排出されます。
- 遮熱効果: 夏場、屋根材が受けた熱が通気層の空気によって上昇し排出されるため、屋根裏への熱の伝わりを軽減する効果も期待できます。
- 結露防止: 通気層があることで、屋根材の裏面温度が急激に下がるのを防ぎ、結露の発生を抑制します。
通気層の確保方法
- 通気胴縁(つうきどうぶち)の使用: 透湿ルーフィングの上に、角材(通気胴縁)を取り付け、その上に屋根材を施工することで通気層を確保します。
- 屋根材自体の形状を利用: 瓦屋根の場合、瓦桟(かわらざん)によって自然と通気層ができます。また、一部の金属屋根材(例:ディーズルーフィング ローマンなど、波型形状のもの)は、その形状自体が通気層の役割を果たすため、通気胴縁なしで施工できる場合があります。
外壁では常識、屋根ではまだ…?
実は、外壁工事においては、透湿防水シート(透湿ルーフィングの壁版)と通気層を設ける「外壁通気工法」は、結露防止や建物の耐久性向上のために広く採用されており、ほぼ常識となっています。
しかし、屋根においては、施工の手間やコストが増えることから、まだ普及が進んでいないのが現状です。
どんな透湿ルーフィングがあるの?代表的な種類と特徴
透湿ルーフィングにもいくつか種類があります。ここでは代表的なものを紹介します。
種類 | 特徴 | 代表的な製品例 |
---|---|---|
標準タイプ | 透湿防水機能を持つ基本的なタイプ。 | タイベック ルーフライナー(デュポン社) |
粘着タイプ | 裏面がシール状になっており、野地板に直接貼り付ける。タッカー(ホッチキスのようなもの)を使用しないため、釘穴からの雨水浸入リスクがない。防水性が高い。 | ラップタイト(ビッグテクノス社) |
遮熱タイプ | 透湿防水機能に加え、太陽光の熱を反射する遮熱性能を持つ。表面がアルミ蒸着されているものなどがある。屋根裏の温度上昇を抑制する効果が期待できる。 | 遮熱ルーフエアテックス(フクビ化学工業) |
選ぶ際には、JIS規格(JIS A6111)に適合しているかどうかも一つの目安になります。
透湿ルーフィングを選ぶべきケースとは?
透湿ルーフィングは多くのメリットがありますが、全ての住宅に必須というわけではありません。特に以下のような場合に、その効果をより発揮しやすいと言えるでしょう。
- 高気密・高断熱住宅
室内の気密性が高い住宅では、湿気が外部に逃げにくいため、透湿ルーフィングによる積極的な排湿が有効です。 - 長寿命な住宅を目指す場合
初期費用はかかりますが、野地板や構造材の耐久性を高め、メンテナンス周期を延ばすことで、トータルコストを抑えられる可能性があります。 - 屋根裏の結露に悩んでいる場合(葺き替え時)
既存の屋根で結露の問題がある場合、葺き替え時に透湿ルーフィングと屋根通気工法を採用することで改善が期待できます。 - 瓦屋根など、屋根材自体の耐久性が高い場合
ルーフィングの寿命が屋根材よりも先に尽きてしまうと、結局葺き替えが必要になります。耐久性の高い屋根材と組み合わせることで、透湿ルーフィングの長寿命というメリットを最大限に活かせます。
化粧スレート屋根の場合は注意が必要?~屋根材とルーフィングの耐久性バランス~
透湿ルーフィングのメリットを最大限に活かすためには、組み合わせる屋根材との相性も考慮する必要があります。特に、化粧スレート屋根の場合、その耐久性のバランスについて注意が必要という指摘があります。
どういうことかと言うと、一般的に化粧スレートの耐用年数は15年~25年程度とされています。一方、高性能な透湿ルーフィングの中には、50年以上の高い耐久性を期待できる製品も存在します。
この場合、ルーフィング自体の寿命が来る前に、屋根材である化粧スレートの寿命が先に尽きてしまう可能性が出てきます。つまり、まだ十分に機能するルーフィングを残したまま、屋根材の葺き替えや大規模なメンテナンスが必要になる、という状況が起こり得るのです。
これは、透湿ルーフィングの長寿命というメリットを十分に享受できないことにも繋がります。
もちろん、化粧スレート屋根に透湿ルーフィングを使用してはいけないということではありません。しかし、屋根システム全体として考えた場合、屋根材とルーフィングの耐用年数に大きな差があると、将来的なメンテナンス計画やコスト効率に影響を与える可能性があるという点は理解しておくべきでしょう。
したがって、透湿ルーフィングを選ぶ際には、使用する屋根材の種類とその一般的な耐用年数を考慮し、屋根全体の耐久性のバランスを見極めることが賢明です。
まとめ:透湿ルーフィングは屋根の未来を考える選択肢!
透湿ルーフィングは、単に雨を防ぐだけでなく、屋根裏の湿気をコントロールし、建物の健康と長寿命に貢献する可能性を秘めた建材です。
「雨漏りしやすい」という誤解もありますが、正しい知識と適切な施工が行われれば、その心配は少ないと言えるでしょう。
透湿ルーフィングを検討する際の重要ポイント
- メリット(結露防止、耐久性向上、軽量性)とデメリット(コスト、施工技術)を理解する。
- 「屋根通気工法」との組み合わせが基本。通気層の確保が不可欠。
- 屋根材の種類や住宅の仕様との相性を考慮する。
- 葺き替え工事が主な採用タイミング。
- 信頼できる専門業者に相談し、適切な製品選びと施工を依頼する。
初期費用はかかりますが、長期的な視点で見れば、透湿ルーフィングは「未来への投資」とも言えるかもしれません。
この記事が、あなたの屋根リフォームや新築計画において、より良い選択をするための一助となれば幸いです。
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